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 寒さを必死にごまかすように街は光で彩られている。陽気な歌が流れ、みんなどこか浮き足立っている。

それが、ものすごく嫌だった。

日々に追われながら目の前のことをこなしていくと、いつの間にかこの季節になる。こっちは毎日生きていくのに苦労しているのに、街は多幸感で溢れているのが許せなかった。なんだか、存在自体を排除されているのではないかと思ってしまう自分がいた。

けど、今年は違う。隣には好きな人がいて、辛い日々から逃げ出すように冬を超えていくことができそうだ。

だからこそ、憎しみが身体中を渦巻いている人に目を向けたい。その人を排除しないで、真摯に向き合いたい。

かつての自分を、それで救いたい。
誰かと過ごす冬は、それだけで寒さも過去も消してくれるから。

12/18/2024, 1:24:29 PM