『遠くの空へ』
学校へ行く日の朝、必ず見かける航空機がいる。
キィンとどこか遠くで聞こえる耳鳴りにも似たその音は、お母さんのおなかの中にいたころから聞いていたものだ。
空から見る景色はどうですか?
ぼくが生まれた島はどのくらい大きいですか。
島で生まれた子どもはいつか島から出なくちゃいけない日がくるらしい。コーコーがないからって。ばあばが言っていた。
基地から出て遠くの空へ飛んでいくあの航空機のように。
ぼくもいつか遠くへ行く日がくるのだろうか。
2年前から通い始めた分校も充分遠いけど。
心の中でひとりそんな風につぶやいてみたりして。
水色のランドセルを背負って立ち上がる。
「いってきまあす!」
家の隣にある畑から「気をつけてねえ」というお母さんの声と、じいじがトラクターを動かす音が聞こえた。
4/12/2024, 2:51:32 PM