一森くま

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帰宅してから、何気なく見てしまったNetflix。
「地面師たち」監督:大根仁
の感想について書きたくなってしまったので書きます。



一話だけ毛色を確かめるために
トヨエツはまだまだイケオジか
綾野剛はしっかり綾野剛してるのか
そんなことだけちらっと確認したかっただけなのに

…気づいたら、明け方の3時になる前に
一気に見終わっていました。
そして頭から一旦出すために今書いてます。
(Xを見ると私と同じ人が多いようです)


まず、
「目撃したい」
が一番に来る作品でした。

久しぶりに日本の作品にここまで心を奪われました。
お笑いは一切なし。だけど所々、心の何処かで一瞬、薄ら笑いを浮かべてしまう箇所があるのです。その薄ら笑いに少しずつ自分自身の中身を自覚、または錯覚していきます。


一話見終わるごとに
ただの目撃者である私から
悪魔の本能のような小さな種が芽生える瞬間があり
犯罪行為という現代社会の枠組みを忘れ
そのうちに地面師たちの魅力に取り憑かれ
継続するスリルの波に飲み込まれていきました。

本当、らせん階段のようです。

最初はそういう波が、息苦しいし胸糞悪い。
なんだかんだでグロいし。

ただ、グロさにも生身の感じがあって、いずれも気持ちよく人が死ぬわけではない。そこが人間らしい作品になっているし、最後のところで真人間に戻してくれるようなそういう優しさのある作品です。

こういった凶悪ものは後味がひたすらに悪いものが多いのですが、続きのシリーズも予感させるような、美しさのあるラストにまとめられており、Netflixエンターテインメントの範疇に納められていました。


俳優陣に関しては、文句なしのキャスティング。
綾野剛は今までで一番良い、と私は感じました。
昨今はプライベートで騒がれていた彼ですが、スクリーンに映る演技を評価してこそ俳優たるものだと彼の今回の演技を見て感じました。
ピエール瀧に関しても、やっぱり代わりの俳優は居ないことを確信させるユーモラスさです。


溢れ出る血のように流れる、綾野剛演じる辻本の憎しみと哀しみが混じったような涙が痛々しく、頭から離れませんでした。

元々は何の意味も持たなかった地球の表面。
そこに勝手に人間たちが欲望のまま価値化して、今の土地が出来上がっているんですよね。


豊川悦司扮するハリソン山中の哲学めいた脅迫的な台詞を思い出しながら、人類の歴史や人間の欲望を振り返ります。

愚かか愚かでないかはさておき
人間だからこそ、生きているからこそ感じられるであろう混沌とした感情がそろそろと浮かんできました。

本当に怖くて、悍ましい、おかしい。
常識とは反対側にいるそういう人は優しい言葉を使うことも思い出しました。
騒いだり、怒ったりしないんですよね。


この作品を見て、楽しかった、面白かった!と感じる人は結構多いと思います。だけどそう感じてしまった自分自身への後悔だったり小さな、または大きな悪魔を内包しているのではないか?といささか不安を抱いてしまう人も多いのではないかと思います。
でもそれはきっと監督の思う壺かと。

後半にかけては、ハリソン山中に私自身が人間を試され、ジリジリと問いかけられているような感覚も生じていました。彼は基本的に無慈悲で冷淡なのですが時折見せる哀愁のある表情に、それ以外の行動理由を探してしまう自分もいました。

辻本のように死の瀬戸際まで、多かれ少なかれ
善と悪、陰と陽、様々なものを抱えるのが人間なのでしょう。そして悪に染まる理由を考えていくと、やはり人間は根源的な暖かさを求めているといえます。

でもその暖かさが、お日様の太陽なのか、家族の笑顔なのか、燃え盛るような炎なのか。それは色々なのかなと。




大根監督がこれからどこまで、何に向かっていくのか
これからもリアルタイムで見られることが嬉しくなる 
そういう作品でした。

お時間があればぜひ
「地面師たち」、ご覧下さいね。


7/25/2024, 7:43:56 PM