霜月 朔(創作)

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クリスマスの過ごし方



今夜は街の灯りが、
やけに眩しく感じる。
何時もより楽しげに賑わう、
街の人の声が耳を刺す。

私は、薄暗い部屋に独り、
静かに座る。
世間の楽しげな声に、
背を向けて。

ワイングラスに注いだ、
仄暗い真紅の液体が、
今夜ばかりは、貴方を思い出させて、
胸が鋭く、ズキッと痛む。

窓の外、雪が降り積もる。
白い息を吐く恋人たち。
あの頃の貴方の笑顔が、
ガラス越しにちらつく。
そんな光景から、目を逸らす。

貴方が隣に居た頃は、
あんなに待ち遠しかった、
この聖なる日も、
今となっては、虚しいばかり。
カレンダーの赤い印さえ、憎らしい。

ツリーもなく、プレゼントもなく、
貴方の温もりもない。
ただ、この冷たい空気だけがある、
この静かな部屋で。
貴方が、私を赦してくれる日が、
私の隣でまた微笑んでくれる日が、
訪れることを、独り、願う。
そんな、クリスマスの過ごし方。
 
何度、繰り返しても、
貴方の居ないクリスマスには、
慣れる事はなくて。
毎年訪れるクリスマスの夜は、
冷たく突き刺さる刃物のように、
私に孤独を実感させる。

好物の筈のワインも、
今夜だけは、酷く苦くて。
それを飲み干し、夜をやり過ごす。
明日になれば、
この聖なる日の痛みは、消える筈。
そう信じながら、独り、
柔らかい睡魔の訪れを待つんだ。

12/26/2024, 7:59:28 AM