よあけ。

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お題:太陽

 かつて、ある人を太陽のようだと形容したことがある。相手は心底嫌そうな顔をした。「私は人だ。勝手に空の上の存在にしないでくれ」と言った。勝手に殺すな、と言いたかったわけではないだろうけれど、勝手に距離を置くなとか、勝手に美化して言うなとか、誇張するなとか、そういうことを言いたかったのだろうと受け取った。「対等な立場ではないから太陽と言ってもいいでしょ?」というのは見当違いで「立場がどうのは関係なく、自分は人間なのだ。人間という立場から突き落とさないでくれ」という話だった。
 神格化されたのが、異物のように扱われ距離を取られたと受け取ったのか、はたまたただ寂しいから同じ人間なんだよと言いたかったのか、その辺りははっきりしていない。
 僕のことを太陽みたいだと形容する人がいた。心底反吐が出そうだった。僕の場合は誇張だったからだ。勝手に神格化されて嫌だった。勝手に僕のことを上にしないでくれ。対等だと思っている人から言われ、それこそ勝手に傷ついて悲しくなっただけだが。
 なんとなく人間は太陽を信仰しているような気がする。意識的にも、無意識的にも。「太陽みたいなあなた」と誰かを形容するのは、まるでその人を信仰しているみたいだ。誰だって誰かの支えがないと生きていけない、そんな同じ人間なのだから、あまり神格化しすぎないほうが……と、思ったが、神格化したいからしているのだろう。他者を神様のように扱い崇拝することで己の精神を保っているに過ぎない。

8/7/2023, 4:16:58 AM