滝谷(shui)

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【朝日の温もり】

「わたし、これからどうしたらいいんだろう」

 深夜遅く、コントローラーを握りしめながら急にそんな事を思った。
 毎日やるのが当たり前だったオンラインゲーム。そのゲームが急に熱が抜け落ちたみたいに、つまらなくなってしまったのだ。

 情熱や、時間を大好きなものに注ぐのが素敵なことだと思っていたのに。
 スッと夢から醒めた熱は。わたしの身体から抜けてコントローラーと共に床へとポトン、と落ちたのだ。

 なんとも不思議な気分だった。
 そして淋しい気分だった。

 寂しいのではなく、淋しい。
 心に穴が開くって、こんな感じなんだ。

 これから、あまりに多くの時間が余る。なのに情熱が空っぽでわたしの体が震えてきた。
 何か代わりに温まる、情熱が沸るものが欲しくなる。

「あ」

 ボーッとしていたら、カーテンの向こうから微かな光が溢れ始めていた。
 窓を開けると風が頬を撫でる。見上げた先にある美しい薄紫の朝日があった。

「……あー……」

 なんかいいな。と思った。
 ただの朝日。でも、見たのはかなり久しぶり。スマホで写真を撮ると、明日も見てみたい気がした。
 これを見ながらコーヒー飲んでパンを齧ったら、なかなかオシャレじゃないかな。

 心の隅っこが満たされて。
 でもまだまだ空っぽのわたし。

「……まずは寝ようかな」

 明日も朝日を見るために。

 何年振りとなるだろう。わたしはその日、とても心地よく寝た。
 そして明日のために、引きこもりの部屋から抜け出すと、美味しいパンを買いに行こうと靴を磨くことにした。

6/9/2024, 1:16:22 PM