己の頬を強く捻る。
痛い、これは夢では無い。
何かにのしかかられているずっしりとした重さで目を覚ませば、眼前に猫耳を生やした白髪の男がいた。
よく見れば若干猫のヒゲのようなものも生えているような。
「お、おい……どうしたんだよ」
俺は確かにこの男の後添いである。しかし猫男と結婚した覚えはない。
「にゃぁあん」
甘ったるい、文字通りの猫なで声。胸元に頭をすりすり擦りつけてくる。
とりあえずそっとその頭を撫でてやれば、嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らしているようだ。
……そもそもこの男は妖怪のような存在だし、猫になることもあり得る……のか。
この奇妙な事実を一先ず受け入れつつ、どうやってコイツを元に戻せば良いか義息子と相談だなこりゃ。
「……っあ、ちょ、おい……っ」
不意に肌蹴た胸元をザラリとした舌で舐められる。
先程までの甘えたモードから一転、この猫男はフーフーと鼻息を荒くしている。
「こ、こら……っ、だめ、っだ……」
全体重を使って無理矢理に抑え付けられているのだ。
そもそもこの男に力で叶うはずもない。
義息子と相談するのはまだまだ後になりそうだ。
観念した俺は、大きく溜息を一つ吐いてゆっくりと目を閉じた。
2/23/2025, 11:21:08 PM