おさしみ泥棒

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 吹きつける木枯らしに身震いした。
 隣になんとなく目をやると、男は缶を傾けて、底をしきりに叩いている。底に残ったコーンがなかなか出てこないらしい。
 このもどかしさに耐えられないから、どんなに寒い日でも、俺は缶のコーンスープを買わない。けれどもこいつは「そのもどかしさがスパイスになってさらに美味くなるんだよ」とかよくわからないことを言って、むしろ自販機のコーンスープを好んで買う。
 いつだったか、この男は「コーラは瓶のほうが美味く感じるのと同じで、コーンスープも缶で飲むほうが美味い」とも言っていた。至極どうでもいいと思ったので、ふーん、と気のない返事をしたことを覚えている。
 バス早く来ねえかなと思いながら、コーンスープと格闘する姿をぼんやり眺めていると、友人は突然むせた。どうやら、コーンが変なところに入ったようだ。激しく咳き込みだしたので、おお大丈夫かと背中をさすってやる。
 友人はひと通り咳き込んでから、息をついた。とりあえず落ち着いたらしい。俺が渡したペットボトルの水を飲み、男は掠れた声で「コーンスープに殺されかけた」と言った。

「コーンのせいでコンジョウの別れになるところだったな」
「…………」

 ひときわ強い木枯らしが吹いた。

【テーマ:木枯らし】

1/17/2026, 12:16:48 PM