恋人になって最初の冬。あなたは遠慮がちに私の手を触れてきた。
最初は指先から。そして徐々に交差するように指を絡めてくる。それはあまりにもゆっくりで、私はなんだか堪らなくなって思いきり彼の手を握った。
彼は一瞬驚いたが、とたんに眉を下げ、
「ごめんね」
と申し訳なさそうに微笑んだ。
謝ってほしい訳じゃない。
彼は優しい人だ。だけど雪のように溶けてしまいそうな程繊細な人でもあった。
だからこうして彼のほうから手を繋ごうとしてくれたのが嬉しかった。
「暖かいですね。」
彼の手を握ったままそう返す。
彼は困惑したのか、私を見つめたまま動かなかった。
「貴方から握ろうとしてくれたの、嬉しかったで
す。だから謝らないで。これからまた挑戦していけばいいんですよ」
「また、ね」
彼はそう呟く。なんだか嬉しそうだった。
「そうだね。またあるよね。」
「そうですよ。年中無休24時間いつでもお待ちしております。」
「それは頼もしいや」
彼の温もりが手のひらから伝わる。あたたかい。冬だからこそ、より感じられる。
「また来年も手を握ってくれますか」
「もちろん。君が許す限りずっと。ずっとだよ。」
これ以上の言葉は要らなかった。
返事の代わりに強く握った。
そして彼は嬉しそうに微笑む。
私の唇が彼に奪われたのはそれから数秒後のことだった。
冬はまだはじまったばかり。
11/17/2024, 2:51:52 PM