子猫
微睡みからふと意識を取り戻すとキーボードの上を黒いふわふわの毛玉が陣取っていた。画面には意味をなさない文字が無尽蔵に並んでいる。
「あー……」
私は一人天井を仰いだ。机の上のマグカップが空だったことは救いと言えるだろう。
小さな侵略者は私の嘆きなどどこ吹く風といった様子でのんびりと丸くなっている。その場から動く気配はまるでない。ため息をついて壁に目を移すと、時計は午前二時を指していた。
私はキーボードを叩くのを諦めて、代わりに子猫の背中を撫でた。柔らかな毛並みが私の冷えた手のひらをじんわりと温めていく。それだけで犠牲になった進捗を許してしまえるのだから、子猫とは恐ろしい生き物である。
11/15/2023, 2:20:23 PM