NoName

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部屋を見て、「ここには何も無い」と気づいてしまった。昨日まではあったのに。私はそれを見て何かを感じ取れたのに。紙吹雪が床に落ちてただの紙の切れ端になる。ぬいぐるみがあの子じゃなくなる。褒められた記憶が先生の仕事になる。私は魔法を使い果たしたのだ。魔法は科学になって、科学は社会になった。魔法使いは言う、魔法は貴方が発達を乗り越えるため、自分を守るために作り出した物なのです。さらなる発達のためにトラウマを克服し、より安定した精神を手に入れましょう。
黒いヒールを片方、もう片方も脱ぐ。森へ放り投げる。
裸足になって脇道へ逸れる。後ろで馬車の走る音がする。私はそこで横になる。どこにも向かわない。どこにも向かえない。だって、どこに向かったって。
私達の物語は、広辞苑へと繋がっている。

8/24/2024, 11:47:25 AM