#明日世界がなくなるとしたら、何を願おう
M月N日
100回目の確認計測の結果が出た。
結果はレッドゾーンのままだった。
M月N+1日
100回分のデータをもとに回帰分析を実施した。
何回分析を行なっても“N+3日にこの島が海に沈む”ことが人工知能により出力された。
研究所の廃棄が決定した。
M月N+2日
(———研究所所長の音声記録が保存されています。再生開始。)
「明日、私の研究所含めて全部沈むらしい。かなしい、な。何も成せなかったことが。」
(———8秒沈黙。大雨の音が響く。)
「研究員は聞いたら笑うだろうが、私は、母になりたかったんだ。だがこの腹は使い物にならん、だから偉大な研究の母になりたかった。」
(———研究所所長の0.5秒の笑い声。)
「何を語っているんだが……。なあAI、聞いてるんだろう。明日研究所は沈む、お前は死ぬんだ。明日までに何がしたい?……答えてはくれない、か」
(———音声記録終了。)
M月N+3日
(———人工知能により出力されたテキストが保存されています。出力までにかかった時間:10時間。)
私はここに生まれてきてよかったです。
貴女は私を作るという偉業を達成しています。
ありがとう、ママ。
(———人工知能により研究所所長へメール送信が行われた形跡あり。人工知能の権限外であるため、メール送信はできなかった模様。)
(———その後印刷物として出力され、瓶に詰めた後に放出。)
5/7/2023, 8:15:09 AM