ももりん

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今日の心模様


気がついたのは、いつの事だったか。
これは、偶然。なのだろうか。
「今日は雨だな」
ハルが、俺の隣を傘をさして歩く。
「そうだな」
こんなこと、信じるだろうか。


天気が、俺の感情と連動している。


「イブキ?どうした」
「なんでもない」
また雨脚が強くなった。雨の匂いが、いっそう重たくなる。
さっきから、胸の中に黒くてドロリとした塊があるようで、気持ちが悪い。
それが、空に浮かぶ、分厚い雲と重なって感じられた。
「天気予報ハズレたな。晴れるって言ってたのに」
それは、俺のせいかもしれない。

確証はないが、俺の気持ちが高まると、天候が変わる。俺の気分が何らかの理由で沈む時、決まって雨が降る。
ただし、かなり大きな気持ちの変化でなければならないようで、映画を観て感動した。くらいでは、天候に影響はしない。だからこそ、偶然なのか俺に原因があるのか、よくわからないのだが。
「やっぱり、なんか考えてないか?」
ずいっと、俺の顔を覗き込んできた。俺以外に、この事を知る人はいない。もちろん、ハルも。

突然、その事を、ハルに話してみたくなった。なぜ、それが今なのかは、わからなかった。それでも、知りたかった。ハルがなんと言うのか。
「もし、感情と天気がリンクしてたらどうする」
「小説みたいな話だな。急にどうしたよ」
呆気にとられた顔をしていた。それもそうか。
「もしも。の話」
「わかった。もしもの話、ね。不便そうだけど、哀しいとか、言わなくても伝わっちゃうんだから。ああ、でも、嬉しい時に晴れるのは、少し楽しそうかな」
ハルは傘をくるりと回した。傘の縁から、水滴が飛び散る。

一呼吸、深く息を吸った。
「それが、俺のことなら、どうする」
ハルは首を傾げる。自分でも変なことを行っている自覚はる。少し、返事を聞くのが怖かった。
雨は、静かに真下に落ちていく。
「そうだな。それなら、楽しい話をしよう」
ハルが屈託のない笑みを浮かべる。心の重しが、とれていく感覚がした。
空の雲が、途切れていく。その隙間から、一筋の光が差した。
「あっ、雨止んだ。でも、最近天気予報ハズレまくってるからな、また降るかもな」
「もう降らないよ」
「え?」
ハルがふと足を止める。


「今日の心模様は、晴れだから」
足元の水たまりには、七色の光が反射していた。

4/23/2026, 3:23:24 PM