深夜徘徊猫

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「影絵」

「ねぇ、あの子の絵綺麗じゃない?」

「本当だ!みよ見よ!」

 絵を描くのが好きだった。でも、正直自分でも思うくらいには下手。僕とは別の子は上手くていいなぁと嫉妬してしまう。いっぱい褒められて、賞なんかも貰っちゃったりして。

 影がひとつかかる。

 将来、絵を仕事にしたい。小さい頃よくそう謳っていた。僕は世界一の画家になるんだって。いつのまにか言えなくなっていった。現実的じゃないから。それに僕、才能だってないし。

 影がまた増える。

 絵を描いていて馬鹿にされたことがある。気色悪いとか下手くそとか。まぁ、実際その通りだから僕は何も言い返せない。なんだか申し訳なくなっていく。

 影が、ふえる。

 中学生の作品コンクール。とは言っても小さなコンクールだから応募したら必ず展示される。僕の絵も例外ではなかった。

「ねぇあの子の絵、なんか汚くない?」

「なんと言うか、暗いと言うか…。」

 僕の絵に指が刺さる。指の影がかかる。暗くなる。

 小さな頃の絵は色彩豊かだった。でも気づけば暗くてもやがかかるようになった。それは、僕の心に影がかかるたび増えていった。影のように付き纏って、離れなくて、飲み込まれた様。

 あの子の方が綺麗と呼ばれた絵を見た。綺麗で確かに輝いていた。

 まるで彼方だけスポットライトが当たったかのように。僕の絵はスポットライトの影のように。

4/19/2025, 3:41:53 PM