たった缶ビール1本で酔っ払ってしまう君をみて、苦しくなる。
毎晩のように安い焼酎やウイスキーをロックで飲み干し、まだ足りないとさらに安いワインを空けてしまう。
決して強いわけでもないのに飲めてしまうし、どれだけ酔って醜態を晒しても自分で片付けまでしてベッドで寝るくらい徹底した自己管理をしてる。いや、醜態晒してる時点で自己管理できてるとは言えないか。まあ他の人に世話を焼かれる前に自分で片付けできるだけマシだろう。
あの日、あの時。嫌がる君を無理やりにでも病院に連れていけばよかった。
あんなに飲んでいた酒に口をつけず、食事にも軽いつまみにすら手を出さない君の顔色は真っ白だった。座っていてもフラフラしていて、立ち上がればそのまま倒れてしまいそうになるのを机にしがみついて耐えていた。何度も病院に行こうと説得してものらりくらりとかわして逃げる。
ついには倒れてそのまま数カ月間、帰って来なかった。
ようやく帰ってきたと思えば治療のために何度も入退院を繰り返して、いつの間にか酒にも食事にも興味を示さなくなった。
一段落ついた、とりあえずは治った、とお墨付きがもらえて久しぶりに向かい合って食事をした。一口二口食べてニコニコしているだけの君にお酒を勧めた。度数の弱い、かつての君が苦い炭酸ジュースと称した缶ビールだ。
おいしいねと言いながら飲みきって、可愛らしくふにゃふにゃと酔っ払う姿に、嬉しさと寂しさと色んなものが混ざってそうだねとしか返せなかった。
酔ったままソファに寝転んで君は寝てしまった。以前の君なら絶対にあり得ないことだった。起こそうと頬をつついてみると薄く目を開けて、柔らかく微笑むだけしてまた眠ってしまう。可愛い、のに、苦しい。
君の寝顔にかつての君を重ねてしまう。こんなのはおかしいが堪らなく惚れ込んでいた最愛の君の姿を君から探してしまう。もちろん今でも好きだ、愛している、離すつもりなどない。だが、俺にはこの人しかいないと思ったあの姿がみられなくなるのが寂しいのだ。
君が長生きするために必要なことだったと思えばいいのだろうか。もし長く生きられなくたって、絶対に一人にはしない。俺の生きる意味を、与えてくれる君を、ずっと愛している。それだけなんだ。
【題:君を探して】
3/14/2025, 2:43:48 PM