クリスマス。
働いていた。
時給は変わらない。
イルミネーションと言えるのは工事現場の電球のやつ。
去年もクリスマスツリーを模った電球が、建設途中のビルを彩っていた。一年で随分立派なビルになったものだ。完成まであと少しといったところか。
「でもこれ、市役所だろ?この点灯費用も税金って考えたら、贅沢なこった。」
そんな声が頭の中に蘇った。今の今まで振り返りもしなかった記憶、声。
「違うよ。市役所はそれの隣。ここには建て替え中の図書館が建つの。」
「ふーん。似たようなもんじゃん。」
いつ、いつの記憶だ?二年、いや三年、違う、中学だからもっと前だ。
「でもこれをレイアウトしてさ、繋げて、点けて、喜んでもらえるかな〜ってわくわくしてるおじさんが居るかもしれないのは、ちょっと可愛いかも。」
「なんだそれ。それこそ仕事でやってんだろ。お前ほんとそういう妄想すんの好きだよな。」
「悪かったな。妄想じゃなくてロマンだよ。居ることにした方が楽しいだろ?それこそサンタと一緒。」
「おい、こんな駅前であんま大きい声でサンタとか言うな。幼気な子どもが聞いていたらどうする。」
「おっと、危ない危ない。」
12/25/2023, 4:24:24 PM