心というものはどこまで壊れていくものでしょうか。
バラバラになって、粉々に砕け散って、目に見えないほどの微粒子になったのなら、すべてを無かったことにしてくれるのでしょうか?
それならばいっそのことそうなってくれればいいけれど、残念ながら心というものは人の目に触れるものではなく、その形状も分からなければ、どんな状態であるのかも人が知る術はないのでしょう。
その言葉は、初めて彼女が「彼女」として私に投げかけた最初で最期の言葉だった。
そしてその瞬間、私は彼女がその腕に抱えていた大切なものを壊してしまったのだと知った。
美しき氷の花。…私の妻。――我が王妃。
誰も彼女の微笑みを知らない。怒りを知らない。
嘆きを知らない。涙を、知らない…。
そしてその本心を知ろうともしなかった。
彼女に心はなかった。長い年月の間に氷漬けにされてしまった感情は粉々に砕かれ、二度と戻ることはなく風花の中に紛れて消えていってしまったからだ。
そしてそれを知るものもまたいなかったことも事実で、私は今もそれを悔やんでいる。
【大切なもの/氷花】
4/2/2024, 11:55:17 AM