かたいなか

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「終わらせないで欲しい、なのか、終わらせないで良かった、なのか。他にも色々考えつきそうよな」
昨日18℃だった東京の、今日の最低気温が7℃。
去年は20℃から6℃に落ちていたらしいので、それよりは、ひょっとしたら快適、かもしれない。
某所在住物書きは、モフモフにしてフカフカな、偉大なる2枚合わせハーフケットを肩より羽織って、ぬっくぬくの至福に浸っていた。
誰かが「肩は寒さを感じやすい」と言っていた。
事実か虚偽かは知らない。

「個人的にはな」
物書きは呟いた。
「コンビニのおでん、冬限定は惜しい気がすんの。いろんな具の出汁吸ったスープがたまんねぇのよ。
冷やしおでんとかで夏、いや、需要少ないか……」

――――――

まさかまさかの続き物。前回投稿分から、1日か2日経った頃のおはなしです。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、そのうち末っ子の子狐が今回のお題回収役。不思議な不思議な、稲荷の子狐です。

子狐は家の中の秘密の部屋の、ぽっかりあいた黒穴を通って、不思議な職場に辿り着きました。
辿り着いた不思議な職場は、動物のビジネスネームを採用する職場で、子狐は「ノラ」、「野良」を名乗るおばあちゃんの腕の中で、丸くなって、すやすや、幸福にお昼寝をしたのでした。

ここまでが前回投稿分。
ここからが今回のお題回収。

「ノラばーば、ノラばーば!」
コンコン子狐、すっかりノラばーちゃんに懐いてしまいまして、その日も秘密の部屋の黒穴を通って、例の職場へ向かいました。
ノラばーちゃんは、コタツの中で毛糸の編み物をして、ちっともジャーキーをくれませんでしたが、
それでも、子狐は優しいノラばーちゃんを、すぐ大好きになってしまいました。
「ノラばーば、きょうも、会いたい!」

秘密の部屋の、不思議な黒穴を通って、コンコン子狐は「ここ」ではないどこかの職場へ向かいます。
「ここ」ではないどこかの職場の、受付窓口をひらりと抜けて、コンコン子狐は「経理部」と書かれたブースへ。陽光当たるコタツへ向かいます。
先日、そこでノラばーちゃんと会ったのです。

「ノラばーば!」
コタツで今日も編み物をしているノラばーちゃんを見つけて、コンコン子狐は尻尾をぶんぶん!
「ノラばーば!」
今日もキツネを撫でて。キツネといっしょにネンネして。子狐は猛ダッシュでノラばーちゃんに……

「確保ッ!!」
ノラばーちゃんに、突撃しようとしたら、
「お前か。先日、俺様のコタツに来た子狐は」
前回投稿分で爆睡していたコタツムリ姉さんが、
がばちょ!子狐を捕まえてしまいました!
「あ〜。あったけぇ。やっぱり、魂ある生き物のぬっくぬくは、格別だぜぇー」
コタツムリ姉さんは、子狐をぎゅっと抱きしめて、すりすり、スリスリ。
「よし。お前の名前は今日から、ゆたんぽだ!」
子狐を、ちっとも逃がしてくれませんでした。

「なにするの、なにするの!はなして!」
「やーだね。ゆたんぽ、テメェはこれから、俺様の湯たんぽだ。俺様の膝の上でネンネしろ」
「はなせ!しらないおばちゃん!はなせっ!!」
「おばちゃんじゃねぇ!俺様は『スフィンクス』。この経理部で最も寒がりな万年コタツムリだ」

コンコン子狐、「スフィンクス」と名乗ったコタツムリ姉さんから逃げたくて、前あんよも後ろあんよもジタジタバタバタ。必死に動かします。
「へへへっ。ゆたんぽ。お前は、あったかいなぁ」
だけど、スフィンクスは、のらりくらり。
子狐のジタバタパワーを器用に逃がして、ぎゅっと、抱きしめ続けます。
「なぁ、ゆたんぽ。ハウスミカン食わねぇか。ハウス食って、コタツの中に入らねぇか」

逃さねぇぜ、ぐへへ。
スフィンクスがコタツの上の、どっさり積まれたカゴからミカンを、ひとつ掴んで子狐のクチに……

「そこまで」
子狐のクチに、ミカンが突っ込まれる前に、
タバコの香りのするおじさんが、子狐をスフィンクスから引き剥がしてくれました。
「こいつは俺達の管轄だ。勝手に所有物にするな」
オッサン!オッサンが、たすけてくれた!
子狐はタバコのおじさんを知っていたので、ぶんぶんぶん!尻尾をバチクソに振り回します。

「茶番は終わり。業務に戻れ。泥棒猫」
タバコのおじさん、子狐を抱えて言いました。
「あーん?法務の小鳥サマが何か鳴いてんな?」
対してスフィンクス、すぐには引き下がりません。
「こちとら、ゆたんぽと取込み中だ。お楽しみを勝手に終わらせないでほしいんだが?
なぁ、ルリビタキ部長。デコポンぶつけるぞ」
タバコのおじさんとスフィンクスの口喧嘩は、その後コンコン5分ほど、続きましたとさ。

11/29/2024, 3:44:05 AM