彗星

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題:鮮明に

 夢を見た。
 でも、一部分だけ。そこしか覚えていない。
 けれど、他の部分を覚えていないぶん、そこだけが鮮明に思い出せる。
 その夢の断片は、チコがほうき星になったとき。
 そこだけが幻想的に、神秘的に、夢の中で輝いていた。
 長い夢がそこだけ思い出せる。それは、その部分が印象的だったということ。
 確かにあの夢の断片は、印象的だった。
 見たら絶対に忘れられないような場面だった。
 そして、現実でも、私はあのときを忘れられない。
 美しい蒼のほうき星が頭上で輝く、あの光景。
 夢の断片と、全く同じの光景。
 夢とはなんなのか。それを考えた。
 もっと鮮明に夢の全てを思い出せないものだろうか。
 夢とは、もう一度寝ても続きを見れない。なぜなのか。
 あの夢の続きが見たい。
 あの夢の伝えたかったことを知りたい。
 あの夢の意味を知りたい。
 そう強く願うのに、もう二度と、その夢の続きを見ることはできなかった。
 夢の断片だけで、ここまで考えたことはなかった。
 全ては、あの時の光景に。

お題『夢の断片』

11/22/2025, 5:12:32 AM