「あれ?なーんか天気悪くなってきちゃった?」
その声にハッとすぐに後ろを振り向くと
そこには両手にドリンクと何か袋を持った彼がいた。
「良かったぁ……」
「ん?どーしたんだよ?あ、わかった!!さては俺が離したって思ったんだろ!」
「……」
「バッカだなー?ほら、コーヒー」
はい、と手渡されると暖かい温もりが一気に伝わる。
「あったかい……」
彼が横に座るとそのまま片手で袋から何かを取り出す。
「あんまいいの無くてさ、悩んじゃって…ほら」
「なんでアップルパイ?」
「あれ?昔アップルパイ好きだって言ってなかった?」
「……好きだけど」
「ほら!俺の記憶力の良さ!素晴らしくねぇ?」
「あはは!でも天気も良かったら最高だったのに」
2人が上を見るとその雲は少し灰色にも見える。
「なんか雨降りそうだな…」
「雨降ったら濡れちゃうね…」
彼が彼女の服を見る。
そこには彼女なりの俺への気持ちなのかワンピース姿だった。
「……せっかく可愛い格好してきてくれたんだ」
「彼氏らしい事してあげたいけど濡れちゃったら風邪引いちゃうからさ…車に戻って食べようよ、沢山話しながらさ?」
彼が立ち上がると彼女の手を掴みそのまま砂浜を歩き出した。
episode 『曇り』
3/23/2025, 2:11:22 PM