Jammin'

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 昔はよく悪夢を見た。過去形だ。

 一口に悪夢といっても様々だろうが、私の場合は人に殺されることを指す。刃物で刺されたり、銃で撃たれたり、食べたものに毒が入っていたり。思い返してみて自分自身でも思うが、悲劇のヒロインもいいところで辟易する。だが、実際に見るのだ。仕方ない。そして言っておくが、あくまで私は一般市民だ。

 最初は殺されなかった。閉鎖的空間で、追いかけ回されるだけ。それでも起きた時には脂汗をかいていた。それがいつからか殺される夢に変わっていった。毎度毎度、死んだ瞬間に目覚めるから後味が悪い。

 それが、ゆりと暮らすようになってからパタリと見なくなった。そして今日、なぜかまた撃たれた。だが、その瞬間に現実に戻ることは叶わなかった。

 あの夢の続き、もはや灼けているのように痛む傷口。こみ上げてくる鉄の匂いと味。徐々に白くなる視界。そんな中見えたのは──

 魘されている私に気づいてゆすり起こす、ゆりの心配に歪む顔。

1/12/2025, 3:31:21 PM