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 幼い頃の夢は、それはそれはとても大きかった。
 サッカー選手だとか、野球選手だとか、警察官に消防士、医者。目につくものすべてに憧れて、夢焦がれた。夢の中では何にでもなれる自分が何よりも輝いて見えた。
 身も心も大きくなるにつれて、その夢は小さくなった。「なりたいから」と言って、簡単になれるものではないと悟ったからではない。身近にある些細な幸せがなによりも輝いて見えるようになった。

 少しでも永く、君とこの幸せの中で生きたい。

 だが、これも俺には大きすぎる夢だったのかもしれない。
 もう身体では君に愛を伝えることも、抱きしめることも、震える手を握ることも、頬を伝う涙も拭うこともできないのだから。


――叶わぬ夢

3/18/2025, 1:28:36 AM