—泣かぬ決心—
自宅に届いた一枚の赤い紙。
彼の徴兵が決まった通知だった。
「頼むから泣かないでほしい」
「そんなこと言っても」
私の目から涙がとまらなかった。
お腹の中には、私たちの子がいる。これからは本当の家族として、幸せな暮らしを送れると思っていたのに。
その日は、一日中泣き続けた。
「行ってきます」
彼は家を出ていく日も、いつもと変わらぬ笑みでそう言った。
「行ってらっしゃい」
私は彼の望み通り、涙を見せなかった。
彼と最後の抱擁を交わし、彼はいなくなってしまった。
『我が軍は、本日も勇戦を続けております。——』
ラジオで毎日流れる戦況報告。
どうか、彼が生きて帰ってきますようにと、私は祈ることしかできなかった。
「彼はお国のために、立派だった」
その数日後、届いた彼の死亡通知。
骨すら帰ってくることなく、ただ無慈悲に一枚の紙だけが手元に残った。
「泣かないよ。私は絶対に泣かないよ」
それが彼との約束だから。
頭ではわかっているはずなのに、私の目からは涙が溢れてくるのだ。
私は、大きくなったお腹を両手で優しく撫でた。
お題:泣かないよ
3/18/2026, 1:26:59 AM