月影 零

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今僕の目の前に立っている女性は僕が嫌いな目をしてる。
様々な欲に染まった、そんな目だ。
彼女の瞳は己は目の前の相手よりも上の存在だと見下しているような、周りの視線は全部自分のモノで全てを手に入れた気になっているような、ドロドロに歪んだ感情に塗れてる。でもその中に僕に対する欲情も孕んでる様にも見えるや。

嗚呼、やっぱり居心地悪いな。あの子の付き添いで参加したこの夜会。あの子の着飾った姿に惹かれて着いてきたけど…ついてない。早くこの場を抜け出したい…。あの子の綺麗な瞳で見つめられたい。この世の"綺麗'を詰め込んだ瞳で、一切の穢れを知らないような純粋な瞳で見つめられたい。

あの子とやりたい事を考えてたら自然と口角が上がってくる。楽しみだなぁ。--ふと目の前の女性を見ると固まってる、真っ赤な顔して。なんでだろ。まぁいっか。適当に話して早くあの子のところに行こ。

「美しいお嬢さん、本日のお召し物良くお似合いですよ。もうすぐダンスが始まると思いますので楽しんで下さいね。」
『あ、あの!良ければ一緒n…ヒュッ』
「…ふふ、どうかなさいましたか?」
『あ…いや、なんでもない…です』
「そうですか、では私はここで失礼致しますね。」
…つい殺気が出ちゃったな。まぁいいや。

-早く、早くあの子の元に

会場を出て屋上に向かうと、居た。白銀の髪が月明かりに照らされて輝いている。僕に気づいた彼女が振り向いてその瞳に僕を映す。青空を閉じ込めた様な、透き通ったその瞳に。

--やっぱり君の瞳は美しい。何者にも及ばない。
そんな瞳に見つめられる、何にも変え難い優越感。

3/28/2023, 12:06:38 PM