⚠️新潟県の市町村擬人化です。実在の市町村及び全ての物と無関係です。
⚠️現実の歴史を元にしていますが間違いが多く含まれます。また現実のいかなるものとは無関係です。
⚠️個人の見解・キャラクターとしての側面が多くあります。苦手な方は飛ばしてください。
⚠️過去時空です。
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今から約1か月前、県議会から通達された文書を待合室でぼんやり眺める。
『高田市及び直江津市を廃し、その区域をもつて新たに上越市を置くものとし、昭和46年4月29日より施行する。』
上越地方中心都市の建設を目的としたこの合併は約20年前から検討されてきたものだった。行政・産業・文化の中心地だった高田市と、直江津港を中心に港湾工業都市として発展した直江津市の合併。そんな二市によって生まれる新たな『上越市』は願いの通り上越地方の中心として発展していくだろう。
そして今日は上越市誕生の日。新潟県の県庁所在地(リーダー)として挨拶とお祝いを、と上越地方までやってきたのだが。
「(高田と直江津の子かぁ……どんな子なんだろうなぁ……)」
どちらも歴史プライドも都市プライドも低いとは言えない。むしろ高めだ。めちゃくちゃ上から目線だったりしたらどうしよう。それはそれで今まで新潟県(うち)にはいないタイプだから面白そうだけど。
コンコンコン…
「新潟市様、お時間よろしいでしょうか。」
時計を確認する。式典まであと30分。
「どうぞ」
「失礼致します。まもなく式典になりますので、一足先に『上越市』よりご挨拶に参りました。」
ドアを開け先導した職員の後ろから青年が入ってくる。
「__はじめまして。本日より新たに市制を開始します、上越と申します。よろしくお願い致します。」
彼は背筋を伸ばし、僅かなぎこちなさを含んで礼をする。目が合った。
……瞳は高田と同じ桜色。柔らかいけれど意志を感じる、一言で言えば上品。
髪は直江津と同じ黒髪。でも直江津は潮風で傷みがちだったからあの艶はきっと高田譲り。
「……………」
「え……っと……?」
「あっ、ごめんなさい!」
ついじっと見つめてしまった。彼は居心地悪そうに半歩後ろへ下がってしまう。
一番最初に市制を開始した者として新たに生まれた市町村たちの様子はそれなりに見てきた。経験を伴わない複数の土地の記憶とまだ曖昧な自己認識。人々の期待と興味に満ちた目に対する少しの不安と戸惑い。
部屋に入ってきた彼の目にもそれはあった。しかし視線は私から逸らすことなく、姿勢は崩さず、淀みなく言葉を紡ぐ。それは賢い軍都と力強い港町の姿そのものだった。
「(……間違いなく彼は、彼らの子だ。)」
懐かしさと寂しさ、喜びと期待。感情はごちゃ混ぜになって胸に溢れるが、一先ずしまっておこう。そろそろ何か話さないと、彼と職員が困っている。軽く息を吐いて前を向く。
「はじめまして。無事にこの日を迎えられて嬉しく思います。___誕生日おめでとう、『上越市』。これからよろしくね。」
手を差し出す。彼は数瞬の後、同じように手を差し出した。
……去った彼らへ感謝を、新たな仲間に祝福を。
しまいきれなかった感情に応えて強まった握手に笑みをこぼさずにはいられなかった。
5/26/2025, 12:50:22 PM