見送らないでと別れを告げた
ひとりきりの出発式
真円以外の寝静まる
寒く寂しい夜のこと
一等綺麗な思い出残して
涙も言葉も隠すまま
君は一人歩き出す
戻れぬ道を歩き出す
‹君を照らす月›
斑に変色した標識の
横に銀杏が立っていた
斑に変色した標識の
上に銀杏が散っていた
斑に変色した標識の
模様だけが銀杏の証
斑に変色した標識は
今はぽつりと立っている
‹木漏れ日の跡›
いってきますと朝日の影
いってらっしゃいと糸一つ
いってきますと夕日の影
いってらっしゃいと糸一つ
いってきますと夜の闇
いってらっしゃいと糸一つ
重ねて重ねて糸を重ねて
お守りのように絆のように
いってきますと音一つ
かえらぬ返事に灯一つ
そして誰も戻らない
そして誰もかえらない
‹ささやかな約束›
皆を救う仏になるのだと
食を断ち水を断ち早数年
立派に木乃伊化した君の
目の前に折り重なる死体
‹祈りの果て›
迷った時の必勝法は
片手を付いて歩くこと
迷った時の必勝法は
動かないで助けを待つこと
迷った時の必勝法は
壁を天井を壊すこと
入口かあるなら出口はある?
自分がいるなら誰かもいる?
行く先を阻んでいたのは
本当の本当は何だった?
‹心の迷路›
11/17/2025, 9:16:26 AM