花の香りと共に
思えば、私たちは花の香りと共に行きている。
朝に飲むアールグレイの紅茶は、ベルガモットの香り。
トイレにはラベンダーの香りの消臭剤。
洗濯洗剤にはフローラルの香りと書いてあったから、やはり何かの花の香りなのだろう。
化粧道具の端に置いてある香水は滅多に使わないけれど、ローズ系の香りだったはず。
他にも整髪料に入浴剤、ハンドソープまで、
こうして挙げてみると、特に好んで選ばなくとも、花の香りは其処此処に溢れているものだ。
さて先日、この春に退職される方に贈るための花束を買った。
手にすると花束からはマスク越しにもふわりと香りが漂い、ああ花とは見目麗しいだけでなく香りまでなんと魅力的なのかと改めて気付く。
そして、先に挙げた生活に満ちた花の香りとは全然違うことにも。
実物の花には植物独特の湿り気を帯びたような生きている香り──においと言う方がしっくり来るかもしれない。花を腐らせたことのある人ならわかるだろうか?状態によっては「匂い」にも「臭い」にもなる「におい」。
とても甘美でありながらどこか危なっかしくもある。そこが良い。
今度我が家にも花を買って飾ろうか。
そしてたまにはマスクを外して、思い切り吸い込んでみよう。花の香りと共にやってくる春を。
──花の香りより先にやってくるスギ花粉を吸いこんで終了するのはまた別のお話──
3/16/2025, 3:16:46 PM