その日はとても暑かった。
へそを曲げていた俺は夏の暑さにも湿気にも、外から聞こえてくるセミたちのうるさい鳴き声にもイラついていた。
夏休みに入って1週間、この日は友達と3DSでオンライン通信をしていたはずだった。そんな夏休みの楽しみは、一昨日の夜両親の言葉に簡単に打ち砕かれた。
「もうすぐお盆だし、ラッシュに巻き込まれないよう早めに帰省するぞ。」
俺はそれを聞いて絶望した、じいちゃん家は楽しくない。行きたくないだの、せめて1日伸ばしてくれだの、色々と駄々を捏ねてみたが両親は聞く耳持たずあれよあれよとじいちゃん家お泊まりセットの準備をさせられた。
一言コメントには『じいちゃん家行く、遊べない』と残したが友達が気づいてくれたかは分からない。
じいちゃん家は東北の山の方にある、つまりはド田舎だ。そしてクーラーも無ければ突然WiFiもない、この時代には珍しい黒電話はまだ現役な、そんな田舎だ。
俺は暑いのは嫌いだし、虫取りも未知の土地探検的なものもあまり興味が無い。そんなことより友達とゲームしたいし漫画読みたい、インドア派の子供なのだ。
そんな訳でやりたいことを取り上げられ、強制的にじいちゃん家に連れてこられた俺はついてそうそう縁側で突っ伏して不動を貫いていた。最初は大人たちが代わる代わる声をかけに来たが、俺の意志が固いことを悟ったのか面倒くさくなったのか声をかけてくるのは軒先に吊るされた風鈴ばかりになっていた。
風鈴は風が吹くごとにリン、チリン、と心地いい音を耳に届けてくれた。その音を聞いていると段々と落ち着いてきて俺はそのまま眠ってしまった。
-後で書く-
8/12/2025, 4:30:03 PM