せつか

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小学生の頃、誰もいない理科準備室でホルマリン漬けのカエルを見た事がある。
ホルマリンのせいで真っ白になった体。
有り得ないところから生えていた五本目の足。
虚ろな瞳。
何気なく開けた引き戸の中にいたソレに、鳥肌が立った。
こんな田舎の小学校に何故いるのか。
どこで見つかったカエルなのか。
説明のような物は一切なく、ただガラス瓶だけがそこにあった。

私の中にある鮮烈な記憶。
思えば他にも奇妙な点はあった。
何故普段自分達が使う教室とは全く違う棟にいたのだろう?
普段は絶対触らない磨りガラスの引き戸を、何故その日に限って開けてしまったのだろう?
何故ホルマリン漬けのカエルがあんなにも気になってしまったのだろう?

考えても答えは無く、私はまた彼等に導かれる。

ゲコ。

頭の奥でナニカが鳴いた。


END


「誰もいない教室」

9/6/2025, 4:38:15 PM