SAKURA・Lemon

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_ここではないどこか_


現在高校二年生の私は、隣町の高校に通っているため、
登下校はよく電車を使っていた。

電車に乗っている20分間は意外にも長く感じて、
私はその空き時間に良く本を読んでいた。

本を読んでいる時はあっという間に終点についていて
電車通学で欠かせないものは小説一択だけだった。

ある日、朝寝坊して急いで家を出て行ったところ、なんとか電車には間に合ったが肝心の小説をリュックの中に入れるのを忘れていた。

これじゃあ暇だよぉ…。スマホでも見る…?いや、私あんまりスマホ見ないタイプだった…。

暇で仕方なく、席に着いて、周りの人々の仕草を観察して楽しんでいた。

周りの大人達、高校生は皆スマホの画面を見つめている。私みたいに本を読んでいる人なんてそうそう居ないんだなぁ…

そう思っていた瞬間、私の目に入ったのは、同じ高校の制服の人。制服のネクタイからして先輩かな…?

なんと、その先輩も私と同じく本を読んでいた。
しかも同じ作家の…!

こんな人混みの中、じっくりと本を読んでいるその姿は、何だか私には愛らしく見えた。初めて会った人なのに、その人の事が気になってしかたなかった。

本も好きで、作家も一緒だなんて…ふふっ趣味が合うのかも

など、呑気なことを考えていたらあっという間に終点の場所。早く降りなきゃ。

…明日も会えるかな?
いつか話して見たいな。






月日が経ち、
三年生になり、受験シーズン。
猛勉強中で、本なんか読んでる暇はないため、いつもと同じようにこの時間帯だけ特別な時間だった。

あの時、彼、先輩に声を掛けなければ、今頃ずっと後悔していた。

そして私は何処かで期待の心を持っている。
また、この電車の中で、巡り会えるかもしれない。

また、話せるかもしれない。

ここじゃなくてもいい、ここではない何処かで、また。

彼とお話がしたい。

その為には、やっぱり彼と同じ大学に行かなきゃいけない。

たまたま私が勇気を出して声をかけたあの日、彼に聞いてみたら、彼も私と同じ所の大学希望だった。私は凄く嬉しかった。受かったら、そこに彼がいる。

彼は応援してくれた。受験生頑張れって。

彼は言ってくれた。次は俺から話しかけるねって。

待ってます。次、ここではない何処かで会える日、それまで


精一杯の実力を出して、大学受験、受かってみせます…!

6/27/2024, 12:28:24 PM