子供の頃、近所の公園のジャングルジムのてっぺんへ登ることは、どこかステイタスを感じることだった
自分より年上の子たちが当たり前のようにサッサと上に登り、実に気持ち良さげな顔で持って上がった紙ヒコーキを飛ばしたり、ピーピーと音の鳴るラムネをそこで食べたりしていた
同じ歳の子が次々と登る中でも、臆病な私はなかなか挑戦する気持ちさえ準備しきれずに、ただただ羨望をそのてっぺんに向けていた
「早く登って来ればいいのに」
という視線が、皆が見ている…と余計に私を躊躇させた
ある日、ようやく決心しててっぺんへ上がる事が出来た日、とても大人になった気分がしたことを良く覚えている
「こんな景色だったんだぁ…
こんなに高かったんだぁ…」
と達成感でいっぱいな気持ちでそこで感じた風は特別心地が良かった
あれだけ怖かった気持ちは、登ることに精一杯ですっかりどこかへ行ってしまっていたが、てっぺんの心地よさをゆっくり味わい、いざ降りようとした時、降りるための勇気を使い果たしてしまったことに気が付いた
どうやって降りて良いか分からない
下を見下ろすと改めてその高さを実感した
「ここにまず足を置きな」
と、友達が教えてくれる
ジャングルジムのバーにしがみつくように腕を絡めながら、足を降ろしていく
「目を瞑っちゃダメだよ」
と友達が叫ぶように下から声を掛けてくれた
登るより降りる方が数倍怖いことを、その時初めて知った
さっきまでの心地よい風は、ただ恐怖心を煽る冷たい風に感じられた
そんな記憶が鮮明に思い出される
あの時も臆病だったけれど、大人になって益々臆病になった
経験が増えた分、何かをやる前に起こるだろう数々のことが脳裏を過る
だから益々臆病になるのだ
子供の頃、何かを成し遂げた先のことまで想像出来なかったから挑戦出来たように、
もう少し心が無防備であれば、今からでも何かに挑戦出来るだろうか…
ジャングルジムに挑戦した勇気
とても良いことを思い出した
『ジャングルジム』
9/24/2024, 3:02:12 AM