【どこまでも続く青い空】
打ち寄せる波の音が、まるで子守唄のように響く。白砂を踏み締めて、波打ち際へと歩みを進めた。
どこまでも続く青い海。青い空。世界の全てが青に染まったような錯覚がして、胸元のペンダントを握りしめた。
(ねえ、見えてる? これが君の見たがっていた景色だよ)
生まれ育った村は曇天ばかりに覆われた、黒々とした海に面した土地だった。あちらこちらに遊びに出かけていた私と違い、病弱で床についてばかりだった君は、私の語る話の中でしか青い海も空も知らなかった。いつか二人で見に行きたいなぁなんて、決して叶わぬ夢に焦がれるように寂しげに呟いた君の手の冷たさを今でも思い出せる。
(これからいくらだって、一緒に見よう。君が憧れた世界の全て)
頬を伝った涙は、あまりにも青い空の眩しさのせいだ。そう自分自身へ言い聞かせた。
10/23/2023, 9:52:51 PM