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 眠れない夜がやってくる。
 淹れたての珈琲から漂う湯気は頬をふわりと撫であげる。たっぷり注いだミルクは夜を思わせる苦さをまったりしたカフェオレへと色づかせた。
 秒針の刻む細かい音。長い夜の付き合い方をぼんやりと考える時間は落ち着く。角砂糖のようにぽちゃんと沈んで、底へと溶けてしまいそうになるのだ。
 一口すするとほんのりと甘いミルクが胸の内側にじんと染み渡り、微睡むような温かさに瞼がどんどん重くなる。
 チクタクと規則正しい秒針は子守唄のようで夜の底へと包み込まれた。



/ 時計の針

2/6/2023, 5:24:00 PM