弥梓

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『小さな愛』
※百合 清楚黒髪×金髪ギャル

 隣を歩く彼女の染めて傷んだ金色の髪が風に揺れている。
「麦の穂みたい」
「え? 麦? 何いきなり」
「あなたの髪の色、収穫前の麦の穂に似てるなぁって」
「ええー!? そこはさぁ、もっと可愛い感じの例えにしてよー! 麦って全然おしゃれじゃない」
 私の例えがお気に召さなかった彼女は、大袈裟に眉をしかめて私を睨んだ。
「例えば?」
「うーん、金髪……金……ゴールド……うーん、お金?」
「全然可愛くないじゃない」
「だって他に思い浮かばなかったんだもん」
 小さな子供のように頬を膨らませる彼女の金が、太陽の光を受けてきらきらと輝いて眩しい。
 眩しさに目を細めると、突然彼女の手が伸びてきて私の髪に優しく触れた。
「あたしと違って、綺麗な黒髪」
 そう言って、彼女は微笑んだ。
 くるくると変わる表情が好き。
 傷んで手触りの良くない髪も好き。
 二人でする他愛のない会話も好き。
 そういう小さな好きが積み重なって、いつしかそれは愛に変わっていった。
 まだ小さなこの愛が、溢れるほどに大きくなったら、その時は彼女に告げよう。
 愛していると。

6/26/2025, 9:03:26 AM