300字小説
宝物の味
妻が亡くなってひと月。彼女の使っていた棚を整理する。家計簿に息子の保育園のお知らせを綴った綴り、町内会の当番表などと一緒に何冊か手書きのノートがあった。
「……これは……」
「美味しい!!」
妻がいなくなってから、あまり食の進まなかった息子がガツガツと俺の作った料理を頬張る。
「……本当に美味しいな」
俺も試しに自分用に作ってみた、おかずを口に運ぶ。妻のあのノートに書かれていたのは、俺と息子の好みに合わせつつ、野菜や肉、魚をバランスよく取れるレシピ集。彼女の愛情に溢れる宝物の味を噛み締める
「おかわり!」
「パパもおかわりだ」
君のぶんも頑張るから見守ってくれ。
空になった皿を手に俺は彼女の笑顔の写真に誓った。
お題「宝物」
11/20/2023, 12:07:40 PM