谷茶梟

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真夜中
(宝石の国二次創作)
誰もが寝静まった真夜中、後ろめたさを抱えながら部屋を抜け出す。先日、ーーが連れ去られた。もうはっきりと顔を思い出せない自分に寒気がした。一階に降り、外を眺めながら歩くと、保健室の窓の縁で遠くを見つめるパパラチアに会った。
「……あぁ、お前か」
パパラチアは力なく笑う。起きてきた理由を、僕に問うことはなかった。
「ここにいるとさ、落ち着くんだよ」
そう、特に意味もない嘘を溢した(嘘であるとはっきりと分かってしまった)。誰も彼を責めないのに、きっと彼は自分を責めているんだろう。
「お身体に気をつけて」
そうとだけ告げ、僕は夜の中をまた進む。

仲間の喪失に眠れなくなるのが、僕だけだと何故錯覚したのだろう。虚の岬まで歩いてきた。先客がいた。イエローは虚ろな眼で、打ちつける波が崩れるのを見ていた。
「……あぁ、お前か」
ぼんやりとまだ気付いていないかのように、力のない声で言った。僕と分かっているのか疑問だ。
「ここにいるとさ、落ち着くんだよ」
こんな寂しい場所が落ち着くのだなんて。それは嘘ではなかった(それはなんて悲しいことなのだろう)。今にも飛び降りそうなイエローを、そっと掴んで大地と結びつける。
「帰ろう」
イエローが意味を理解するまで、僕は帰ろうと言い続けた。夜を抜け出すように、空が明るくなる。星が消える頃、僕たちは学校に帰った。

5/17/2023, 11:11:11 AM