通りすがりの一般人

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【知るのはもう俺だけ】


画面の前のお前、少し聞いていかないか?

これは、ガキの頃の話なんだけどさ...

そいつとは、近所の小さな公園で会って、暫く一緒に遊ぶうちに仲良くなったんだ。

そんなある日、いつもの公園に行くと俺とそいつしか居なかった。

何して遊ぶかそいつに聞こうと顔を向けたら、そいつは真剣な顔で俺に小さな声で耳打ちした。

『君だから教えるけど、実はね...裏山に秘密基地があるんだ。一緒に行かない?』ってな。

え?行ったかって?勿論行ったさ!当たり前だろ?

今思えば、山に空いた小さな穴に捨てられてたソファを置いただけの空間を秘密基地って言ってたんだ。

でも、当時は非日常感と俺らだけの秘密空間っていう要素が噛み合って気分は最高だった。

んで、今に戻るが...秘密基地を教えてくれたんだそいつは、昨日交通事故で死んだんだ。

28歳だった、早すぎるだろ?

20年前、俺とそいつしか知らなかった秘密基地の思い出は、今じゃ俺しか知らない。

...だぁれも知らない秘密の記憶さ。

え?言って良かったのかって?

まぁなんだ、思い出に浸りたかったんだよ...

もうあいつは居ないからさ。


お題「誰も知らない秘密」完

2/7/2025, 10:24:52 AM