「ねぇ、ラト。」
「はい、なんでしょう。主様。」
今日の主様はかまって欲しいようです。
私に抱きついて離れない。
「私だけのラトだよね?」
「はい。もちろんです。」
目の周りが赤い。
泣いていたのでしょうか。
「じゃあなんでミヤジの方優先したの。」
私もラトのこと呼んだでしょ。
と怒る主様。
「それはそれは、すいません。
ミヤジ先生の方は何か急ぎのようだったので…
でもそのあとちゃんと主様のとこ行きましたよ。」
「後じゃダメなの。私が呼んだらすぐ来てよ。」
「ふふ、分かりました。」
すぐに情緒不安定になる。
耳を澄ませば、
少し早くなった主様の鼓動がよく聞こえる。
「笑わないでよ。」
あぁ、泣き出してしまった。
可愛いですね。
「すいません。主様。」
主様が可愛くて。
と言うと顔を胸に擦り付けてきた。
「らときらい。」
「おや、私は主様のこと好きですよ。」
「きらいだもん。」
「では離れますか?」
そう言って抱きしめている腕を少し緩める。
「いやだ…なんで…。」
「では、嫌いなんて、言わないでください。」
「うん…わかった…らとすき、すき。」
「はい。主様。私も好きですよ。」
甘く囁くと主様は安心した顔で笑う。
「らとはわたしだけのもの。」
さらに抱きついてくる主様。
「そうです。私は主様のものですよ。」
「うん…ずっとわたしの、わたしのもの。」
「くふふ…。」
こんな小さくてか弱い主様。
目を真っ赤に腫らして見てくる顔も、
目を潤めて私を見る顔も、
光を宿さない目で私を見る顔も、
どれも全部愛おしい。
少しして、頭を撫でていると主様は寝てしまった。
「あぁ、寝てしまいましたか…」
では、私もここで寝てしまいましょう。
誰にも邪魔されない。
この愛おしい寝息を聴きながら。
私は主様が居なくならないように、
強く抱きしめて、眠りについた。
5/4/2024, 12:39:02 PM