「ねえ、おいで?」
彼は優しく笑って両手を広げた。
私は思わず怯む。
「ちょっと、みんなにそんなこと言ってるんじゃないでしょうね?」
疑り深い私に、彼は呑気な声で
「大丈夫、僕は君一筋だよー」
と答える。一体どうなんだか。
二人でブランケットにくるまって、ベランダに出た。星がとてもきれいだ。澄んだ空気が、私の肺の中に入って黒いものを少しずつ浄化してくれる。思わず鼻の奥がツンとして、じわりと涙が溢れそうになる。
背後で彼が少し笑った。
「泣いてるの?」
「泣いてない」
「そんな君には、おまじないをしてあげよう〜。ちちんぷいぷい」
「何それ」
「病める時も健やかなる時も〜」
「…ちょっと待って」
抱きしめられる力が強くなった。私は思わず下を向いた。彼は耳元で囁く。
「 」
「…ばか」
我慢できずに私が顔を上げると、はにかんだ様子の彼と目が合った。
♯伝えたい
2/12/2024, 3:36:23 PM