「今年の桜の葉の塩漬けと、桜の花を使ったシロップを作りました!
今回は特に自信作だから、とにかく味見してみて!」
目の前の彼女は自信満々に、私に試作品を差し出した。
彼女は二枚の小皿にそれぞれ 塩漬けとシロップの瓶から、その一部を載せて男に渡す。
「では、頂きます。どれどれ……」
男は一口食べてから、難しげな顔で黙り込んでしまった。
「え、何その反応。美味しくなかった?
あなた、桜を使った料理が好きだったわよね? これでスイーツを作ろうと思っていたんだけど……」
「美味しいとか不味い訳じゃなくて、……そういう問題じゃないし、コレは味を決めてはいけないんだ……」
そもそも、と男は言った。
「今回の品は随分自信ありげだったが、どこの桜の木から葉や花を採ってきたんだ?」
「それは……」
男に問い詰められて思い出そうとした女は、しかし顔を青ざめた。
「どこの桜か、思い出せない……」
「そうだろうね……」
男はしたり顔で頷いた。
「この味は死体を元味した、味だよ。
きっと桜の根元に埋められた死体を栄養分にしたからこそ、こんな複雑怪奇な味になるんだ」
ーーー女は思い返すと、どうして男があの味の詳細を詳しく知っていたのか。
きっと、と説明しながら、どうして断定口調で言えるのか。
そもそも、あの男自体が誰だったの。
どうしてもわからなかった。
4/6/2025, 6:46:19 AM