暗月

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ただ、必死逃げる私。なにかから逃げるように。

「嫌だ、誰か、助けてくれっ、来るなっ、」
もう、体力は底を尽きそうだ。
呼吸が乱れ、息をするのもやっとのこと
俺を追いかけて来るやつは何か分からない。得たいの知れないどす黒い何か。
がむしゃらに走り回り、額に汗で張り付いた長い前髪など気にしてられない
その"なにか"はペースを落とすこと無く追いかけて来る
それに比べ、俺はもう疲れきって歩くこともままならない状態で"なにか"が来るのを待っている
あぁ、もう無理だ。そんなことを思った
へとへとになり立てず地べたに座り込んでしまった。
最後にあれはなにか知りたくなり"なにか"をじっと見つめる。恐怖だってある、だけどもう体が動かず見ることしか出来なかった
すぐに"なにか"が俺の目の前に来た。
どす黒いなにか、その真ん中には
怯えた自分がいた。泣いている自分自身がいた。
やっと気づいた。
"なにか"の正体は俺、自分自身でずっと奥底に追いやり隠し込んでいた気持ち。そのものだった
俺は自分からは一生逃げられないんだな、
「はは…もう、誤魔化せないか、」
頬につう、と一雫たれ、歯止めが効かなくなった
涙が止まることを知らないかのように流れて止まらない。
いつからだろうか、涙が出なくなったのは自分で自分を閉じ込めたのは…


気がつくと、朝になっていた
あれは夢だったらしい、寝ながら泣いていたのか枕が湿っていて服は汗でぐっしょりと濡れていた
だが、気分だけは良かった。心なしかすっきりしていて前よりも朝日がきらきらと輝いて見えた。
もう、自分を閉じ込めないように生きてみよう

5/31/2023, 3:34:49 AM