懐かしく思うこと
今年から赴任してきたこの学校が、どこか淋しいのはなぜだろう。去年までいたところと違うのは偏差値くらいで、校舎の作りも担当科目も変わらないのに。
授業中、黒板を向いていると何かが物足りない。例えば、あの温度。
ああ、そうか。
前から4番目の、右から2列目。そこに座っていた彼女は、今どうしているんだろうか。まだわたしを探してなどいないだろうか。
いつかまた会えたら話したいことがある。この春に生まれた娘のこと、学校間のカルチャーショック、君の視線のない淋しさ。
彼女はなんて言うだろう。馬鹿ですねと笑ってくれるだろうか。はぐらかすかのように目を細めて、またわたしを見つめるのならば。
「ごめんな」
君が懐かしい、福井。
『彼女と先生・おまけ』
10/31/2024, 6:35:14 AM