椋 muku

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慣れないストッキングを履いて制服を着る。冬用のスカートは厚くて風を通さない。それでも1歩外へ出てみれば冷え込んだ空気に負けてやはり寒いと感じてしまう。吐いた息は白いのに雲は雪を降らせまいと持ちこたえていた。金曜日。今日も私は学校へ行く。

華の金曜日。世のサラリーマンは飲みに出歩くみたいですよといつか先生が言っていた。学生の私たちには程遠い話だと思っていたけど、子どもと大人の狭間におかれている私たちにはそう遠くもない未来の話だった。それでも「金曜日」という存在は少なくとも子どもや大人にとって特別な存在なのだろう。明日が休みというのはすごく気が楽だ。でも2日間君に会えないと思うと少し残念に思う自分もいた。だから今日こそは何か週末のモチベーションになるものを作らなければ…

そうこうしているうちに、放課後になった。今日も収穫はなし。君とまた2日間会えなくなってしまう。今日は職員室に寄ってから帰ることにしよう…

「あ。何してんの?」

君がひょっこりと顔を出す。

「え。あんたこそ何してんのさ」

「あー。歩くのだるいから親に電話してた」

テレフォンカードをしまう君を見て私はひらめいた。

「今度さ、一緒に帰らん?一緒に帰りたいんだけど…」

君がニヤニヤを隠せずに私を見つめる。

「え…い、いいけど」

無事成功した。なんかすんなりとモチベーションが上がっちゃった。

冬。それは寒くて冷たくて凍るような寂しい季節だと思ってた。でも今年の冬は君との何かが始まりそうなそんな季節です。


題材「冬のはじまり」

11/30/2024, 8:58:33 AM