鮮やかな空の下、僕はめいいっぱいに叫んだ。
「いつかまた!ここであなたと…」
立ち去っていく彼女の後ろ姿を見て、僕は寂しさを覚えた。
彼女の風に靡く栗色の毛は、僕を決心させるには十分過ぎるほど美しかった。
だって、こんなへっぽこな僕でもあの人は全て受け止めてくれるのだから。
「私も…」
彼女は僕の方に無邪気にくるりと回転し振り向いた。
まるで鈴を転がしたような高い声。
そこで見えた顔は美しく、まるで…
美しい?
美しいってなんだっけ?
「あ…そのっ」
彼女は体を僕の方に向け、草をかき分け進んできた。いや、掻き分けは違う。どちらかといえば、腐らせて進んでくるの方が正しいだろう。
彼女が歩みを進める度に、僕の心臓の鼓動はみるみる上昇していく。顔の色はとっくに変化して、額には汗が滲んでいる。
「私も、また会いたいって思ってるよ」
声だけは優しかった。
首に強い力を感じ、僕はその場に倒れ込んだ。
赤い液体が、周りの草を染めていく。
「もちろん地獄で私の奴隷として、な?」
意識が朦朧とする中、見えたのはぐちゃぐちゃになった醜い彼女の顔と、大きな鎌だった。
「また会いましょう」
僕は、彼女に魂を売ってしまったことを強く後悔した。
彼女は死神だったのだから。
それ以降の記憶は、ない。
11/14/2023, 7:16:57 AM