霧夜

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優しい一面を、知っていた。

勉強熱心な事を、知っていた。

周りに慕われている事を、知っていた

口は悪いけれど、それがツンデレから来るものだと知っていた。

笑顔を絶やさない所を、知っていた。

好きな物と嫌いなものを、知っていた。

沢山知っていた、...ハズだったのに。

静かな教室で、啜り泣く君の姿。

弱々しくて、儚く消え入りそうな君。

...嗚呼、俺は君の何を見ていたのだろう?

---二作目---

最初は、一人の時間は、なんの苦でも無かった。
確かに、彼の事は好きだったけれど、そんな彼の時間を奪うまで傍に居たいとは、思わなかった。


___...今夜は、満月だ。
ガラス越しに、夜空の景色を見詰めながら、スマホの電源を入れる。
そこに映るのは、彼からの一通のメッセージ。

『今日は遅くなる』と。
たったそれだけの、メッセージ。

...吐き出される息は、白くなっている。

「...早く帰って来て下さいよ...」

小さな呟きは、誰に届く訳でも無く、闇夜に消えていった。

#ずっと隣で
239作目

3/13/2024, 11:45:15 AM