茜色

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「じゃあね、隆彦。また来るから」
ーーーもう来なくていいよ。
去っていく真梨の背中を見つめながら、心の中で呟く。

今日で35回目。
真梨はいつも遠いところから毎月俺に会いにきてくれる。
来月来たら36回目。
俺が死んでからちょうど3年だ。

もういいんじゃないか、真梨。
俺が事故で死んだのは、真梨が俺を外に誘ったせいじゃない。
そういう運命だっただけなんだ。
誰も悪くなかったんだよ。

ーーー大事な彼女だった真梨の横に他の男が立つのは今でも嫌だ。
それでも、真梨が俺の墓の前であんな表情を浮かべ続けるくらいなら、それでいい。
俺を忘れてもいいし、俺に会いに来なくてもいいから、また前みたいに笑っていてくれないだろうか。

真梨がここに来なくなるまで、俺は墓石とともにこの場所にいようと思う。
真梨の気持ちを受け止めるために。
そして、会う度に同じ言葉を紡ごう。

真梨はもう自分を責めなくていい。
幸せになってくれていいんだ。
俺のことは忘れて。
もうここには来なくていい。

きっとそれでいい。
それでいいんだ。
そうじゃなきゃ、いけないんだ。





テーマ『それでいい』

4/4/2024, 1:55:03 PM