崩壊するまで設定足し算

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▶51.「大空」
50.「ベルの音」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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「今日は晴れ、ね」
花街の女、子猫は、いつものように開けた窓から外を見ていた。
小さい頃はお使いを頼まれるたびに外に出ていた。
不吉といわれる黒髪のせいで虐められることも多かったが、
それでも外に出るのは好きだった。

だが、お使いを頼む側になってからは窓から眺めるばかりで、
自ら外に出ることをしなくなった。

大好きだった母親と同じ黒髪。
窓から入る風に煽られ、そよぐ。
冬の風は冷たいけれど、それでも昼下がりなら気持ちがいい。

成長した子猫の黒髪は「妖艶」と映るらしく、
客からの人気がそこそこあるのだから人間は誠に勝手である。

もっと見上げれば、視界いっぱいの大空。
人形が同じ天気の場所にいれば、きっとその旅は順調に進むであろう。
そうであって欲しい。

渡り鳥だろうか、上空に小さく、鳥が2羽飛んでいくのが見えた。

「‪✕‬‪✕‬‪✕‬も、仲間ができればいいのにね」

花街を、ううん。
いっそのことなら、この街を出て本当の外を見てみたい。
花街の子猫ではなく、ただの人間として。

夢見る気持ちを新たに、子猫は窓を閉めた。

12/21/2024, 12:47:38 PM