梅雨になると周りの人達は、イライラし出す。
髪がまとまらないとか、洗濯物がたまってしまうとか。
中にはジメジメした気候が嫌とかで、八つ当たりする人も居たりする。
かくいう私は梅雨と言うよりも雨が好きだった。
土砂降りの力強いモノも、小降りのしとしとと鳴る雨音も好きだし、いっそずぶ濡れになるのも良い。
ただし濡れる場合は風邪を引かないように注意が必要になるけど、あの肌に当たる冷たさも心地良いと感じる。
それから絶対に外せないのは雨上がりの夕焼け空。綺麗な茜色に染まった空と、薄く色をうつす街並みはすごく綺麗で大好き!
水溜りに映る空の色も、虹の架け橋も、素敵なものは雨が運んでくるのだ。
だから私は雨が好き。梅雨時期にはお気に入りの傘を持って、今日の雨はどんなモノを運んでくるのかと胸を躍らせる。
連日雨続きでみんな不機嫌だったある日。その日は久々の晴れの日だった。
少し湿った朝の空気とは対照的に、さらりとした空気が通る。
大好きな夕焼け空は無いけれど、暮れていく空はどんな時でも綺麗だと私は思う。
そんな風景を眺めながら歩く帰り道で、ぽつりと頬に冷たい感覚がした。
最初は気のせいかと思ったけど、その内その感覚がはっきりとしてくる。
しかし、空を見上げても雨雲一つない綺麗な空だった。けれども、次第に強まっていく雨足に、私はふっと笑ってしまう。
「今日はお狐様が嫁入りしたのね」
急いで開いた折りたたみ傘に、雨が当たる音がする。
空は相変わらず雨雲のない綺麗な空で、そこに少しずつ夜の帳がおりていく。
せっかく乾いてなくなってきていた水溜りは息を吹き返し、あの空を映している。
それを眺めながら、歩く帰り道。
ふとした瞬間、目に入ったのは―――水溜りに映る虹の架け橋。
それはまるで宝石の様に輝きながら、風が吹く度に水面と共に煌めきながら揺れていた。
その光景がとても綺麗で⋯⋯虹が消えるまで眺めていたら、いつの間にか雨は止んでいてすぐそこに夜が迫って来ていた。
私は驚きつつも急いで家路に帰ると、大好きな君にさっき見た綺麗な虹の話をするのだった。
6/1/2025, 1:00:51 PM