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「落ちていく」


あぁ~~~
って思って、気づいた時には崖の下まで滑り落ちてた。

落ちてく瞬間は何も考えられないし、兎に角反射神経頼みで、大きな怪我をしない様に、上手いこと障害物を避けながら落ちれた。

でも、落ちてしまって周りを見ると。
ヤバい、スマホもどっかに吹っ飛んだし、助けになりそうな物がない……

一緒に来ていた彼は?大丈夫なの?
一緒には落ちてないみたいだけど、って、ちょっと待って?
私、よく考えたら彼に押されなかった?

彼とはそろそろ結婚の話もしてて、だから、彼のお母さんの入院費も私が払った。
まだお母さんには会えてないけど、私の印象は悪くないと思うし、結婚まで秒読みだった。
なのに、何故彼が私を押すの?

ううん、分かってる。ホントは分かってるよ。
あの優しさも、全部嘘だったんだよね。
私からお金を引き出す為だけの嘘だったんだよね。
わかってる。私が邪魔なんだよね。
分かってるよ?

こんな位なら、障害物とか避けずに、そのまま落ちてしまえば良かったのかも。
そしたら、こんな思いしなくて良かったのかな?

……違う、駄目だよ。やっぱり、駄目。
何とか生還しないと。

幸い大きな怪我はしていない。
スマホがなくても、時計はアナログだから方向は分かる。
ある程度のサバイバル知識はある。
雑学って、いざという時に役立つって、今しみじみ実感してる。

生き延びる。そして、もう一度。
もう一度、彼に逢いたい。

きっちり後悔させてやらないと、死んでも死にきれない。
待ってて。必ず、貴方の元に行くから。


11/23/2024, 12:47:29 PM