はた織

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 犬は暗闇の家に戻ってきた。

 リビングの一角にある犬小屋に入る。
 小屋の中にあるパソコンを見つめて息をひそめる。
 そうして、橋の下から産まれた鬼子の帰宅を怯えながら見届ける。

 鬼子がいなくなればおやつの時間だ。
 3秒に1個消えるケーキを貪り、歯と舌と喉をぐちゃぐちゃと鳴らす。
 飼い主が用意した餌には手をつけられない。

 犬だから火に怯えて点けられない。
 電気もガスコンロもマッチの点け方も何度しつけても覚えられない。
 その癖にタバコのライターの点け方は知っている。

 そもそも餌の場所さえも覚えられない。
 どんなにご馳走を用意してくれても、飼い主が直々に用意したものでは無いと食べられない。
 そう勝手に自分で自分をしつけている。

 母は叫ぶ。ご飯よとイヤホンを差す犬にそう叫ぶ。
 犬は生返事をして、ネットの掲示板に遠吠えを打ち込む。
 月に吠えない犬に、セント・ニコラウスからの金貨は贈られなかった。
          (241225 クリスマスの過ごし方)

12/25/2024, 1:40:47 PM